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No.065

劇場の女子便所について

劇場で女性用の便所が足りず休憩時間には女性トイレの前に列ができ、休憩時間いっぱい並んでいたといった状況が言われ始めてずいぶん経つように思いますが、未だに便器個数がどの程度あると適切なのか、どのような便所の形態が望ましいのかといった答えは明確にはなっていないように思います。
新しく劇場・ホールの計画を行う際には、必ずといってよいほど「女性用便所の個数を多く」という要望が出ます。多ければよいのは確かですが、限られた敷地条件の中ではその分ホワイエ等の面積が狭くなることにもつながりますので、全体のバランスから数を決定する必要があります。

■算定の目安

便所の個数を規定するものとしては、東京都では「興行場法」に係る条例の施行規則に基準がありますが、この別表で示す個数は(私の理解の限りでは)昭和59年に制定されたときのままの数字であり、あくまでも最低限の個数を定めているのみで適切な個数を示すものではないと考えられます。
以下に参考資料を書き出してみました。

1.(東京都の場合)興行場の構造設備及び衛生措置の基準等に関する
  条例施行規則 第7条

  二 便所の数は、別表1に揚げる基準以上に設置すること
  別表第一(第7条関連)便器の設置基準

観覧場の床面積の合計
(単位平方メートル)
観覧場床面積に対する便器の数
300以下の部分 15平方メートルごとに1
300を超え600以下の部分 20平方メートルごとに1
600を超え900以下の部分 30平方メートルごとに1
900を超える部分 60平方メートルごとに1

1000席の客席を持つ施設の場合、1席あたりの面積(通路含む)を0.8m2/席と仮定して計算してみると、客席部の面積800m2ですので

  300m2/15+(600-300)m2/20+(800-600)m2/30=20+15+7=42個

男女半々設置、男子便所は大便器を1/5程度設置とされていますので

  女子便所:21、男子便所:小便器16〜17、大便器4〜5

となります。
ライブハウスのようなスタンディングを想定した施設と、ゆったりした固定の座席を持つ施設とでは本来必要個数は異なるべきですが、条例で示す便所の個数はあくまでも床面積を基準に算定されているため、収容可能人数が異なっても同じ個数でよいことになってしまい、少々疑問を感じます。

2.日本建築学会「劇場における女子便器所要個数の再検討」
  (守屋秀夫、福本貴子)


劇場・ホールでの女子比率は60〜90%と考える必要があるとされており、女子便器は「観客席定員100人につき3〜4個は欲しい」となっています。

3.空気調和・衛生工学会「衛生器具の適正個数算定法(6)
  限定利用形建物における算定法(その2)」(紀谷文樹)


許容できる待ち時間を基準に必要便器の個数が示されています。
1000席の劇場での催し毎の女性の比率を50%〜80%と仮定すると、女性:最大800人・男性:最大500人。80%の人が許容できるレベル1の場合、以下の個数が必要となります。
《女子》便器 :29個 洗面器:10個
《男子》小便器:10個 大便器:9個 洗面器:6個
1000席の劇場の場合で比較してみると以下の通りとなります

女子 男子 合計
小便器 大便器
1.興行場の構造設備及び衛生措置の基準等に関する条例施行規則(東京)※1 21 16〜17 4〜5 42
2.日本建築学会「劇場における女子便器所要個数の再検討」 30〜40
3.空気調和・衛生工学会「衛生器具の適正個数算定法(6)限定利用形建物における算定法(その2)」※2 29 10 9 48
 ※1:1席あたりの客席部面積は0.8m2/席と仮定
 ※2:女性の比率を最大80%、男性の比率を最大50%と仮定

以上の参考資料を基に施行規則を遵守しつつ、最近の劇場の便所個数実績等を考慮して、私は以下の方法で算定した数値を目標値として使っています。
  • 男子便所については興行場の施行規則で求められる数字、女子便所については同要求数の倍を設置する。
  • 観客人数をベースに、1個/14〜15人として必要数を出し、その2/3を女子用とする。
催しの内容によって異なる男女比に対応するために様々な試みも行われています。
  1. 男女の便所間に可動のパーティションを設け、状況に応じて男女の便所エリアを変更する
  2. 男女共用の便所を設ける
  3. 臨時対応で男子便所を女子用として使用する
1.では実際にどの程度パーティションの位置を変更して運営されているのか、2.は実際に男女共用で問題はないのか(正直女性の立場からは男性と一緒に並びたくはないので・・・)など、今後是非調べてみたい課題のひとつです。
女子便所の環境を改善し、快適な混雑のない便所レイアウトとすることも劇場における女子便所計画の重要な要素です。洗面器での混雑を避けるためパウダーコーナーを設ける、並んでも目立たない壁面をつくる、出口と入口を分ける、ブースの空き状況を表示する、混雑の少ない便所を案内する といった手法が取り入れられている施設も増えてきました。

「和便器はまだ必要か」といった問題にも興味がありますし、今後、各施設の利用状況、「この数で足りない/足りている」、「このような対策をとって成功した」といった生の声を是非お伺いしたいと思っています。その際にはご協力をよろしくお願いいたします。

(株式会社シアターワークショップ 今川 敦子)

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