No.058でご紹介した埼玉県吉見町の吉見町民会館が4月1日に開館しました。
愛称を町民から公募した結果、特産物であるいちごをスペイン語で表した「フレサ」を使った「フレサよしみ」という愛称が生まれました。
「ゆっくり、しっかり、じっくりと 動き出すよしみの文化づくり」というコンセプトのもと、開館から1ヶ月程度たった4月の下旬に2つのこけら落とし公演が行われ、いよいよ本格始動となりました。
■みんなで祝う開館
こけら落とし第1弾として、4月23日(土・祝)に大月みやこさんのショーが行われました。
吉見町の皆さんが毎年踊っている「吉見音頭」を歌っているご縁での出演依頼となりましたが、町民が親しみを感じている存在だけあって、2回の公演はいずれも客席がいっぱいになりました。
また、吉見音頭を歌う際には町民有志が舞台上や客席通路で吉見音頭を踊り、ショーを盛り上げました。
そして2日後の25日(火)から、第2弾の「町民参加こけら落とし」が行われました。参加団体の協力を得て昨秋から準備してきたこの企画は25日〜5月1日の展示発表、30日〜1日の2日間の舞台発表が行われ、こちらも多くのお客様が来場されました。
舞台発表では、初めて本格的な舞台に立ってスポットライトを浴びるという方が多く、緊張と興奮が舞台袖や客席へ伝わってきました。今回の体験で病みつきになった方々が、より主体的に町民参加企画を運営される日が来ることを期待しています。
■フレサよしみを支えるサポーター
No.058で管理運営の検討組織である「夢・21」をご紹介しました。彼らは昨年度、4回にわたるプレイベントを企画・実施し、管理運営計画策定のみならず、フレサよしみのPRに大きな役割を担いました。
フレサよしみの完成に伴って検討組織としての「夢・21」は解散となりましたが、その委員を含む町民で組織された「サポーター委員会」が新たに発足しました。
「舞台芸術が好き」という方よりも「新しい会館で何かやりたい」という思いから参加した方が多かったため、未知の世界に足を踏み入れたとまどいも未だ大きいと思います。しかし研修後も一生懸命に勉強し、早くもフレサよしみの運営を強力にバックアップしています。
今後さらなる研修や体験の機会を経て、フレサよしみの顔としてさらに活躍してくれることでしょう。
これからもフレサよしみは「ゆっくり、しっかり、じっくりと」、一歩一歩吉見町の文化の発展をめざして歩んでいきます。
是非一度、足を運んでみてください!
【吉見町民会館 フレサよしみ 施設概要】
| 広さ |
大ホール:582席 (他に車椅子席、親子席あり/前218席で仕切って使用も可能) |
| 小ホール |
213m2(可動椅子設置時:最大約200席) |
| 併用施設 |
スカイホール、会議室6室(展示・練習機能あり) |
| 問い合わせ |
0493-53-1331
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(株式会社シアターワークショップ 山下貴子)
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■ヨーロッパの劇場と火災
ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場が火災にあい、2004年11月に再開したのは皆さんの記憶に新しいことだと思います。火災の原因は、改修工事中の工事関係者による放火とのことでした(工事の遅れをボヤ騒ぎでごまかそうとしたところ、大惨事となっていまいました)。
ところで、19世紀にはヨーロッパの劇場では多くの火災が発生していました。当時は現在のように電気設備が普及しておらず、照明設備はガス灯が使用されており、それが火災の原因の多くを占めていたようです。また、舞台上で本火を使用し、それが火災につながるケースも多かったようです。出火の場所については舞台部が最も多かったとのことです。
■日本の劇場と火災
先にヨーロッパの劇場の火災について述べましたが、日本の劇場においてもやはり多くの火災が発生していました。東京においては、震災や空襲によって多くの劇場が焼失しています。また、1958年(昭和33年)に起こった東京宝塚劇場の公演中の火災では、死者が出たと報じられています。このときの出火原因は火事の場面での「吹きボヤ」とのこと。
参考に日本の劇場で発生した火災とその原因について簡単にまとめてみました。
【日本の劇場における火災】
| 年 | 劇場名 | 出火原因 |
| 1876 | 中座、角座、浪速座(大阪) | 道頓堀火災 |
| 新富座、中橋座(東京) | 数奇屋橋町火災 |
| 中村座、薩摩座(東京) | 朝倉馬道火災 |
| 1880 | 久松座(東京) | 橘町火災 |
| 1882 | 猿若座(東京) | |
| 1886 | 猿若座(東京) | |
| 1888 | 六彦座(大阪) | |
| 1890 | 千歳座(東京) | |
| 春木座(東京) | |
| 1893 | 浅草鳥越座(東京) | |
| 市村座(東京) | |
| 1898 | 春木座(東京) | |
| 1899 | 歌舞伎座(大阪) | 横浜大火 |
| 1902 | 改良座(川上座)(東京) | |
| 1921 | 歌舞伎座(東京) | 漏電 |
| 1923 | 東京都内の劇場の殆どが焼失 | 関東大震災 |
| 1926 | 御霊文楽座(大阪) | |
| 1932 | 市村座(東京) | |
| 1945 | 東京都内劇場焼失 | 空襲 |
| 大阪や名古屋内劇場焼失 | 空襲 |
| 1951 | 上野公園都民劇場(東京) | |
| 1953 | 丸ノ内スバル座(東京) | コードショート |
| 1954 | 新宿セントラル劇場(東京) | 電気アイロン |
| 大阪OS劇場(大阪) | |
| 1956 | 神田共立講堂(東京) | 火鉢 |
| 1957 | 明治座(東京) | トランスショート |
| 1958 | 東京宝塚劇場 | 吹きボヤ |
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■劇場における法規
火災が起きないよう、また火災発生時に人が安全に避難することができるよう、多くの国では防火についての法規が定められています。とりわけ、劇場の場合は多くの観客を収容するため、防火に関する法規は重要視されています。日本の場合は、建築基準法や消防法、建築安全条例、火災予防条例によって、建物の構造、客席部の構造や配置、通路の幅員や出入口の幅、消防用設備や非常用設備等の基準が規定されています。現在の法規ができる以前にも、建築に関する法規は定められていましたが、劇場の防災に関するものは少なかったようです。しかし、1921年(大正10年)に規定された「興行場及興行取締規則」では、劇場に関しては構造部の耐火性、舞台の区画、避難通路や階段、客席椅子、客席通路の幅員、排煙設備、消火器の設置等細かい規定がなされました。
■劇場における法規の課題
前に述べた法規によって、防火や火災時の安全が確保されていますが、逆にこれらの法規によって劇場としての機能が損なわれる場合もあります。避難誘導灯や客席誘導灯は基本的に常時点灯することとなっていますが、それが演出上の妨げ(暗闇を必要とする演出等)となり劇場人を悩ませました。しかし現在では、誘導灯の規制が緩和され、消防に届けを提出すれば消灯が可能となりました。また、舞台上で本火を使用する際も消防に届けを提出することにより、使用が許可されています(許可されない場合もあるようですが)。このように近年は、法規が以前に比べ緩和されつつありますが、芸術表現の幅が法規によって規制されているのは事実です。客席誘導灯(足元灯)の緩和については詳細かつ明確な規定が未だなく、消防署との話し合い等によって決定されています。そのため、消防署によって、また署の担当者によっても意見が異なるのが現実で、これは客席誘導灯を設置することが不可能な劇場(平土間の劇場等)においては、かなり困難な問題となっています。
今後、劇場が劇場として機能し、芸術表現が法規によって規制されることなく、演出家の創造意図が実現される素晴らしい作品を生み出すためにも、多くの観客にそれを提供するためにも、劇場における法規について見直すべき部分や課題は多々あるのではないでしょうか。
【参考文献】
- 日本建築学会:建築雑誌
- 本杉省三:劇場火災における和洋の視点、建築防災、2001.4、p.1
- 守屋秀夫:劇場火災、建築防災、2000.12、pp.17〜18
- 本杉省三:防災理念の形成とその実現が劇場建築にどのような影響をもたらしたか、建築防災、2000.12、pp.19〜29
- S.ディトワース著、白川宣力・石川敏男訳:劇場●建築・文化史、早稲田大学出版部、1997年
- 東京消防行政研究会編著:火災予防条例の解説
- 財団法人日本建築技術者指導センター編集、建築省住宅局建築指導課監修:基本建築関係法令集
(株式会社シアターワークショップ 林恵子)
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