過去のニュースVol.036でも「劇場・ホールの改修について」という話題にふれていますが、今回は私が最近担当した「改修プロジェクト」をベースに改修工事までの業務の流れを簡単にまとめてみます。
T.改修工事のながれ
改修工事が行われたのは築16年の公共多目的ホールです。
あらかじめ会館側による予備調査、改修項目の洗い出しおよびその想定工事予算(更新予算)、予算要望、休館期間の調整等の作業が進んでいましたので、改修計画の策定、概算工事費の見積、実施設計、工事監理が実際の業務となりました。
会館の利用受付開始が1年前の場合、少なくともそれ以前に工事のための休館期間が決定されていなければならないため、早い時期での予算確保(少なくとも想定)が非常に重要となります。
1.ヒアリングと調査
まず施設管理者・技術者へのヒアリングおよび調査から始め、問題点の把握を行ないます。ヒアリングは「改修項目リストの内容の確認」、「ホール運用状況の確認」、「事故の経緯」、「改善要望事項」などについて行ない、「竣工図の内容確認」、「開館後の改修済項目の確認」、「設備利用状態」、「目視による現場確認(破損・汚損状況、危険箇所の確認等)」についての調査を実施します。
これらの基礎調査を基に、性能の確保、安全性の確保、施設サービスの向上、作業の効率化、法規対応、時代性といった観点から工事項目の再検討、改修方法の検討・提案を行ないます。
2.実施計画の策定
改修項目は次第に膨らんでいく傾向にありますので、工事費(概算見積)の算出後、実施する項目の絞込みが必要となります。
「現状のままで引き続き使用可能か」、「その場合何年後に改修・更新が必要となるか」、「将来的に予算の確保は可能か」なども考慮し、緊急度・重要度を判定、代案の検討を行ない、ホールの運用状況と使い勝手を十分に理解した総合的な判断を行ないます。
想定工事期間内で工事が可能かについても検討が必要ですが、再オープン前の技術スタッフのトレーニング期間もスケジュールに入れておく必要があります。
これらの検討・再調整を行ない、最終的に実施する改修工事の実施計画の取りまとめを行ないます。
3.実施設計〜発注
実施計画に基づき実施設計図書の作成を行ないますが、この時点で発注時期、発注方式が決定されている必要があります。発注方式については、新築時の各工事業者への隋契発注か/競争入札か、分離発注か/一体での発注か、競争入札の場合の入札参加条件の検討なども必要です。また、発注時期については休館する工事期間に段取り良く工事を進められるよう、数ヶ月前の発注が必要です。
なお、室内音響に影響の出る可能性のある内装の改修が工事に含まれている場合、新築時と改修前における室内音響環境の変化の把握、改修後との比較を行なうことができるよう、改修工事着工前に室内音響測定を実施することが必要となることもあります。
4.改修工事の実施
一般的に工事休館期間にはゆとりはありませんので、発注後は定期休館日や空き日を利用した各業者による現地調査、各工事間のスケジュール調整、施工図・製作図の作成、機器の製作等が工事休館期間に入る前に開始されます。
改修工事の場合、実際に使用する技術者からの変更要望が出される可能性もありますので、できる限り柔軟に対応する姿勢が必要と考えます。
事前の建築音響測定を行なっている場合には、改修工事竣工時点の音響測定、改修前のデータとの比較・評価を行ない、音環境の変化がないことを確認します。
工事期間の会館技術スタッフの業務としては、工事の確認、更新後の設備内容にあわせた仕込図の作成、竣工・引渡しの際の取り扱い説明、新しい機器類の操作トレーニングなど様々な業務があります。
II.長期的計画の策定
実際の改修工事の業務を以上に整理してみましたが、このような大型改修を計画的に進める方法として、開館当初より50年、60年先までの長期的な計画をたてておくという動きが始まっています。
1.長期修繕・更新計画
建物のライフサイクルにおいて、建設費用の何倍もの費用が維持・保全に必要となります。これらの費用を長期的に予測し、削減することは施設の運営にとって非常に重要な項目です。施設の維持管理という観点からのみでなく、劇場・ホールにとっては利用者の安全、問題のない運営のための改修・更新が重要な要素となってきます。
各設備の進歩にあわせた改善も必要とはなりますが、将来どのように設備が進歩していくかは予想できない部分も多いため、ひとまず現状の設備を同等レベルで更新することを前提に時期と予算を想定しておき、そのスケジュールにあわせて継続的な検討・予算の確保を行なうことをひとつの方法と考えます。
単体でみると若干早めの更新と考えられるものであっても、長期休館が必要となる空調等の一般設備更新の時期にまとめて行なうことも、運営・作業効率を考える上では必要となります。
他の施設へのヒアリング等を行なった結果からも、長期休館を要する大型改修工事は開館後13年〜15年をひとつの単位として計画する必要がありそうですが、その3〜5年前には実際に必要となる改修項目の見直しを開始することが重要です。
設備等の定期的なメンテナンスをきちんと行なっていても、ある時期に必ず修繕・更新は必要となります。あらかじめその時期を想定し予算を確保していくという長期計画が必要となってきています。
(株式会社シアターワークショップ 今川敦子)
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長野県茅野市のJR茅野駅東口に建設された「茅野市民館」が7月17日にプレオープンを迎え、一般来場者向けの内覧会が行われました。マルチホール・コンサートホール・アトリエ・茅野市美術館・イベントスペースの各施設で市民による発表が行われ、華を添えました。当日の様子をレポートいたします!
マルチホールの舞台開きは市長による一番太鼓からスタートし、続いて市内の太鼓・舞踊・邦楽のサークルによる発表と茅野市消防音楽隊による演奏が行われました。コンサートホールは奈良澪子・真潮さん親子によるジョイントコンサートで幕を開け、引き続きコーラス・器楽・室内楽の各サークルによる発表が行われました。
市長の一番太鼓による開館と聞くと、「今どきどうして?」と思われるかもしれません。確かに、三番叟やファンファーレなどが近頃の開館記念式典などの主流。近隣のホールも当時の市長さんの一番太鼓で開館しましたが、それも15年ほど昔のこと。「何故今市長の一番太鼓!?」そう感じたのはみなさんだけではなく、矢崎市長ご本人もそうだったようです。市民一人ひとりの自己実現の場なのに、どうして市長の一番太鼓…?自問自答をしながら、何度か市民館に足を運んでいたある日、市長さんは偶然備品の松羽目を目にしました。「おおっ!この松羽目の前で太鼓が叩いてみたい!!」こうして市長さんは一大決心をしたのでした。それから忙しい公務の合間を縫って太鼓の練習をし、大急ぎでこの日の衣裳を用意されました(もちろん自前!)。当日は練習の甲斐あって、カッコイイ一番太鼓を披露してくれました。市長さんの一番太鼓に続いて舞台に立った皆さんの顔も本当にうれしそうでした。
市民による自己実現の場を目標に整備されたこの市民館で、文化活動を楽しむ皆さんはもちろん、市長さんも市民の一人として市民館で自己実現をしている姿に見ているこちらもうれしくなりました。プロポーザルから運営の準備を市民の皆さんと一緒に取り組んできた私たちにとって、この日の感動はひとしおでした。
茅野市美術館では「茅野市民館『美』ものがたり」の展示が行われました。美術館のみならず全館を利用し、茅野市民館ができるまでの様子を趣向を凝らした展示で見せてくれました。
当日の茅野市民館は夕方まで3,500人以上の市民で賑わいました。
夜にはコンサートホールで夜学塾改め「夜楽塾」が行われ、設計者の古谷誠章氏と、設計プロポーザルの審査員だった大野秀敏氏と同じくプロポーザル審査員で地元出身の藤森照信氏とのトークに、茅野市民館は夜まで熱気に包まれました。プロポーザルの審査員だったお二人と、完成した建物の中でトークをするという非常に珍しい機会に、古谷さんも緊張気味の様子でした。トークは終始和やかに進み、竣工した茅野市民館の感想をお二人とも楽しそうに語られて、古谷さんもほっと胸をなでおろしていらっしゃいました。
ようやく市民の皆さんに建物をご覧頂くことができましたが、今はまだまだプレオープンです。10月のグランドオープンまではお試し期間として様々な事業を実施します。ボランティアスタッフ研修や8月28日には子供のためのシェイクスピアカンパニーによる『尺には尺を』の公演などが行われます。
グランドオープンの10月1日にはマリンバ奏者の三村奈々恵さんとバイオリニストの川井郁子さんを迎えたコンサート、10月2日にはニューヨークから地元出身のDJを迎え、ニューヨークのクラブシーンを茅野で再現しようという企画が進行中です。茅野市民館の特徴であるマルチホールの可動客席を最大限に活かし、二日間で全く趣向の違うライブをお見せします。これからの茅野市民館にご期待ください!
各事業の詳細は茅野市民館ホームページをご覧ください。
HP:http://www2.chinoshi.net/shiminkan/top.html
(株式会社シアターワークショップ 小池浩子)
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