私は今年4月からホールの管理運営の業務に携わることになりました。大学で劇場に興味を持ち「ホールの空間性とは?…云々」といった抽象論的な面では興味を深めて参りましたが、実務経験はほとんどなく、全くの素人同然で業務へと就くこととなりました。
今回は、初めてホール管理という業務に関わり感じたことをお伝えしようと思います。
■″ザ・養生″
「ヨウジョウ」「ヨウジョウ」催事仕込日にはこの言葉が多く聞かれます。「ヨウジョウ」はホール管理をするようになって、最も新鮮だったもののひとつです。普段ホール管理されている方には当たり前のことだとは思いますが、当初私は「ヨウジョウ」の漢字変換もわからない状態でした。
養生とは「ホールの壁や床が傷つかないように金物の什器や木工の下にカーペット状のパンチ等を付ける」ことです。短時間で搬入・搬出を行う催事が多い中、時間を気にするあまり作業が乱暴になり床や壁に傷が付いてしまうことがあります。そのため必要に応じてホール側から施工担当者の方に養生をお願いするのです。これは、ホールを綺麗に維持するというホール側の意図ももちろんありますが、何よりもまず傷を付けてしまった場合発生する傷修繕費用の支払い義務からお客様を守るためのものであるのです。
今でこそ以上のようなことを理解し、養生をお願いすることが出来るようになりましたが、当初は頭では理解出来ていても、実感には程遠いものでした。まだ実際にホールが傷ついた現場を見ていない、どの程度の作業でどう傷がついてしまうのかわからない、どうして養生をしなくてはいけないのか説明できない、というこれ以上ないくらい頼りない状態で「ヨウジョウシテクダサイ(←棒読み)」を繰り返し、経験ある施工業者の方たちから胡散臭い目で見られてしまうこともありました。
又、ホールの維持管理としてホール備品を大切に扱って頂くことも重要になります。ホールは開館して今年で7年になりますが、下見にいらっしゃったお客様から「7年経っているとは思えないほど綺麗ですね。」と言われることもあります。しかし、ホール設備の維持には費用と使う側の意識の高さが必要となります。
当初、私はホールを借りる側の気持ちでした。お客様は備品を壊す気などありませんが、お客様が備品を借りているのは催事会期中のいわゆる「一瞬だけ」なのです。それに対し、ホール側としては次のお客様に綺麗な状態でそれらをお貸し出ししたいという気持ちがあります。そうしたお客様とホール側の温度差も徐々に理解し、お互いが気持ちよく貸し借りが出来、且つお客様が満足されるホールの貸し出し方についても考えるようになりました。
■″視点の変化″
視点の変化はホール内のみに限りませんでした。当ホールはオフィスビルやショッピングセンターが隣接するビル街の端に位置しており、駅からの道には数多くのサイン(掲示物)や看板が掲げられています。これまではそれらのサインに関心を払うことはありませんでした。
しかし、人通りの多い駅内の大型の吊り看板が風で大幅に揺れていると、どうやって吊っているのか、どう吊ったら揺れが収まるのか、などに注意がいくようになりました。又、台風襲来の際、サイン類は凶器となり得るためたたまれます。レール掲示のサインがビルの壁面下に折りたたまれているのを見て、これはどのような方法で掲示されるのか、といったことにも徐々に目が行くようになりました。
余談ですが、夏に幾つかの美術館に行った際、建物自体の部屋の配置、来場者の導線、展示物に当てる照明のピクチャーレールの配置などが気になり、展示物だけでなく別の視点からも美術館を楽しめ新鮮な経験となりました。
現在、ホール管理業務に就き約半年が過ぎましたが、未だ「クラッシャー」という渾名が付きそうなほど失敗の連続です。今回初めて任せられるお客様の下見や打ち合わせでも、自身が頭で理解していることと、お客様にわかりやすい理想的な説明とは天地の差があり、カタカナ説明にならないようにと試行錯誤の連続です。
経験的にも実務的にも未熟ですが、お客様に気持ちよくご利用して頂くために、笑顔を忘れずお客様の気持ちに沿ったサービスが出来るよう心がけております。今後は、実務的なサービス向上のみならず、″設備面、ソフト面においてお客様にとって使いやすいホールとは?″″効率的なホールの維持管理とは?″″倉庫の広さや配置等ホールスタッフにとって作業しやすい設備とは?″…など広範な視点からホール管理運営を考えられるようになりたいと考えております。
(株式会社シアターサポート 鈴木美弥子)
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