あけましておめでとうございます。
本年もシアターワークショップ、シアターサポート共々、よろしくお願い申し上げます。
2005年は指定管理者の嵐が吹きまくった年でした。突然のルール変更で、行政も民間も劇場・ホールの現場も大騒ぎという状況だったように思います。弊社でも管理運営計画に関するコンサルティングの一環として、指定管理者制度導入の検討や公募の業務補助などを行っておりますし、応募者としても積極的に参加しています。幸い、ふたつの施設の指定管理者に選定され、来年度からはそれらの施設の管理運営を行うことになっています。また、指定管理者に関する講演をさせていただくこともあり、文化政策研究者とは違う視点からのお話をしております。文化政策研究者には指定管理者に関する講演の依頼が多く、いいかげんうんざりだという声も聞こえてきますが、ぼくの視点は現在の指定管理者制度の導入に対してどうするかということだけではなく、むしろその先に見えてくるものを考えようというものです。
昨年の9月に東京多摩公立文化施設協議会の自主文化事業研究会において、「"指定管理者"の次に来るものは」というタイトルでお話をしました。その時に講演の冒頭で、出席者のみなさんに「指定管理者に関する50の質問」をさせてもらいました。回答は即座にイエス、ノーを答えてもらうものですが、あなたの回答はどちらですか?
- 公立文化施設
- 人間の生命にかかわる施設である。
- 公の施設であるから、公平性、平等性が最優先である。
- 個性的であってはならない。
- ミッションを持たなければならない。
- 明確な意思を持つべきである。
- 自主事業を行わなければならない。
- 採算性を重視しなければならない。
- 利用率を重視しなければならない。
- 指定管理者制度
- 公立文化施設の管理運営はより良い方向に向かう。
- コストは削減できる。
- サービスは向上する。
- すぐに改正されるに違いない。
- 文化行政
- 指定管理者制度の導入により文化行政の負担は軽減される。
- 行政は文化に口出しするべきではない。
- 運営主体
- 直営が望ましい。
- 指定管理者はどんな業種の企業あるいはNPOであってもかまわない。
- 指定管理者は芸術文化の専門家集団であるべきである。
- 芸術監督あるいはプロデューサーが必要である。
- 専属の上演団体を持つべきである。
- 民間の参入
- 民間企業が指定管理者になると、収益性のない事業は行われなくなる。
- 民間企業が指定管理者になると、市民参加に支障が生じる。
- ビルメンテナンスや技術管理会社では事業に支障が生じる。
- NPOが指定管理者になると、継続性が担保できない。
- 公立文化施設の管理運営規則
- 受益者負担とするべきである。
- 管理経費は利用料金収入でカバーすべきである。
- 減免制度は必要である。
- 行政利用の場合でも利用料金は支払うべきである。
- 一切貸館をしない公立文化施設があっても良い。
- 一切自主事業をしない公立文化施設があっても良い。
- 事業経費は当該事業による収益でまかなうべきである。
- 貸館やチケット予約など、すべて市民を優先すべきである。
- 長期の連続使用は禁止すべきである。
- 施設内の飲食は制限すべきである。
- 施設内の物販は制限すべきである。
- 24時間365日オープンとすべきである。
- 市民参加
- 市民参加が必要不可欠である。
- 市民参加ができる範囲には制限を設けるべきである。
- 研修システムが必要不可欠である。
- 評価
- 毎年評価を行い、情報公開しなければならない。
- 評価基準や評価方法など公立文化施設の評価システムは確立している。
- 年度ごとの達成目標が明確である。
- 評価は行政が行えば良い。
- 専門の第三者機関が必要である。
- 評価には市民の意見を反映するシステムが必要である。
- 施設
- 多目的ホールは無目的ホールである。
- 劇場・ホールの「目的」とは上演演目のジャンルのことを指す。
- 専用ホールは機能的で使いやすい。
- 公立文化施設には日常的な芸術文化活動のための機能が必要である。
- いつでも自由に使用できる空間をできる限り広くする。
- ホームレス対策などのために、利用の制限を設ける必要がある。
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以上の50問ですが、研究会ではわざとアトランダムに質問しています。もちろん、すべてイエスが良いという設定ではありません。また、即答していただいているので、後から回答が矛盾することもあり、むしろそれが狙いでもあります。そんな矛盾の中から、これからの方向が見えてくるのだろうと思います。自由な発想で公立文化施設をもう一度見つめなおしてみませんか。
ぼくの回答をお知りになりたい方は、どうぞご連絡を下さい。楽しみにお待ちいたしております。
(株式会社シアターワークショップ代表 伊東正示)
(※ご意見ご感想はこちら)
平成15年9月に地方自治法の一部を改正する法律が施行され、公の施設の管理について、これまでの公共団体や公共団体の1/2以上の出資団体に限られていた「管理委託制度」から、株式会社やNPOなどの民間団体も含んだ「指定管理者」が管理を代行する「指定管理者制度」へと変更がなされました。
公の施設はすべて、3年以内(つまり18年9月まで)に直営か指定管理者かを選択し、必要な手続きを済ませて制度移行を行う必要があります。
制度移行のリミットが迫り、多くの自治体で指定管理者が決まりつつある昨今、様々な課題や問題を指摘する声も上がってきています。
弊社は募集する側の補助だけでなく、一応募者となることもあり、私自身も審査員も応募者も経験させて頂きました。
そんな日々を送るなか、「雑感」として感じていること、考えていることを書いてみようと思います。
私は指定管理者制度そのものに反対してはいませんが、下に挙げる事項については、対策を考えていかなくてはいけないと思っています。
●継続性が担保しにくい
- 市民参画の継続性
指定期間が3〜5年が殆どであるために、市民とやっと馴染んだな、という頃に指定管理者が変わる、ということが大いに想定されます。
市民参画が当たり前のように言われ、市民が利用者の主体である劇場・ホールにおいて市民と長く関係性を構築することができない状況に陥ることは避けなければなりません。
- まちの文化の継続性
後半でも書きますが、行政が文化政策を十分に考えていないままに指定管理者制度を取り入れ、文化政策が指定管理者の行なう自主事業任せになってしまうと、まちの文化の継続性が担保できません。それだけは避けるべきことです。
●リスクマネジメントが十分でない
劇場・ホールには自主事業の赤字リスクや、災害時などの利用収入減のリスクなど、読みきれないリスクが存在します。
こういったリスクの存在を十分考慮してリスク分担表が作られれば問題ないのですが、指定管理者の募集はPFIほど事業規模が大きくないため、法律のプロが関わってリスク分担表を作るということが難しい状況です。
すると募集担当者が近隣事例を見ながら作らざるを得ず、行政側の負担を明記できなかったり、指定管理者側の負担過多の分担表になってしまったりするケースが発生しがちです。
一方応募者も、指定管理者になりたいばかりに危険なリスク分担表をそのまま受け入れたり、自分からリスクを背負い込んでしまうところもあるように思います。
委託関係に見られる「請け側の弱み」がこの制度においても出てしまうことは、指定管理者制度の間違った方向への進行を助けることになり、後々自分たちが苦しくなって、もし指定期間中の倒産などが起こったときには、市民サービスが低下してしまいます。
●募集する側(=行政)に求められること
最も課題としたいのが、文化政策に対する考え方を明確にすることです。
都市形成や、子どもの精神的成長に文化が不可欠な要素であるという考えが浸透しはじめ、文化芸術振興基本法の施行もあって地方自治体では文化振興計画が続々策定されています。一方で、業務水準書ひとつ書くのに苦労している現状があったりします。
自治体の全体計画があり、その下に文化振興計画や文化政策があり、文化振興計画や文化政策の中心的な部分を担う存在として劇場・ホールがある、と捉え、指定管理者にどんなことをしてもらうかの根本的な考え方、方向性をきちんと明示する必要があります。
それが無い場合、指定管理者ごとに異なる方向性の事業が展開され、先にあげたとおり文化の継続性が担保できなくなります。
「指定管理者制度のために文化が死んだ」と言われないためにも、行政がきちんとした考えを示し、導くことが必須です。
●応募する側に求められること
提案書(事業計画書)ではどうしてもコスト削減をアピールしがちです。財団まで加わってコスト削減レースが展開されることもありますが、民間には、財団とコストで競り合って勝つことは容易なことです。
いずれの団体も、何を武器にするか、足りないところをどうやって補うか、などコスト以外の勝負どころはたくさんあります。
コスト削減ありき、で始まっているところもある制度ですが、そこで応募者側がコスト削減レースを自ら展開しすぎないようにしていきたいものです。
ましてや提案書(事業計画書)は約束状のようなものなので、書いたことが指定期間に実行できなければ、指定継続の道は開けてきません。自ら枠をはめすぎたり、願望に近い目標をつい書いてしまうことのないようにしないと、指定管理者になっても辛いばかりです。
ほんとうに気の赴くまま、「雑感」を書き連ねてしまいました。
指定管理者制度の導入によって、文化政策を考えなおした自治体や、自分たちのあり方を見直した運営団体、公共性について考えを深めた民間団体は多いことと思います。そういう点ではこの制度も良い影響をもたらしているのではないでしょうか。
平成20年ごろかそれ以降、次の指定期間の募集ラッシュが来る時は、今回よりも公募件数が多くなることでしょう。それまでに対策の検討を進め、制度の一部変更を働きかけることも含めて、この制度をより活用する手段を見出すことができればと思います。
まずしばらく、この制度がなくなることはないでしょうから。ちょっと(かなり?)大変ですが・・・。
(株式会社シアターワークショップ 山下貴子)
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