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No.110

さくらホールが学会賞受賞

 北上市文化交流センター・さくらホールの設計で、久米設計設計本部建築設計部設計部長である野口秀世氏が2006年日本建築学会賞作品賞を受賞しました。弊社は設計者選定の段階からこの計画に関わり、久米設計・高橋設計による設計JVチームと共に、さくらホールを生み出したメンバーの一員であり、共に喜びを分かち合いたいと思います。
 日本建築学会賞には論文賞、業績賞もありますが、学会賞といえば作品賞を指すように、建築の設計に携わる者すべてが最も強い関心を持っているのが作品賞です。作品賞は文学の世界における芥川賞のようなもので、受賞することによって一流の建築家の仲間入りが認められるといった感があります。ですから建築家を志す者にとっては、あこがれの賞なのです。そして、これまではアトリエ派の建築家の受賞が大半で、野口さんのような組織事務所のスタッフが受賞することはめずらしいことなのです。組織事務所の場合には芸術作品としての建築を設計するということよりも、機能性や経済性といった完成後の使われ方を意識した建築を設計する傾向があり、多くの場合、それが芸術性を損ねる結果になっています。さくらホールの場合、芸術性を追求するデザインをするような予算的な余裕もなく、ただひたすらに日常的に人びとが集まり、芸術文化活動の拠点となるような空間づくりに専念した建物です。もし審査委員会が建物のデザインだけで評価したなら、きっと受賞には至らなかったでしょう。実際、書類審査の段階ではデザインについてはそれほどの高い評価ではなかったようですが、評価をいただいたのは建築プログラムであり、新たな地域に根差した芸術文化施設の提案と運営のあり方を示す施設構成が注目されたようです。
 昨年12月11日に行われた現地調査の日は日曜日だったこともあり、さくらホールのすべての空間は市民であふれていました。大ホールでは幼稚園の園児たちの発表会でしたし、中、小ホールも利用されているため、ちょっと覗いていただく程度でした。むしろ審査員が注目したのはアートファクトリーの使われ方で、あちこちに若者がたむろし、楽器をいじっていたり、ダンスをしていたり、練習室のガラスの壁ごしにバンド練習している姿などが見えていました。審査員の先生がたは、建物の写真を撮るよりも人びとの活動ばかり写しているようにさえ見えました。ほとんどの審査員は、こうした状況が公立文化施設の理想の姿であるということはペーパーでは知っていても、実際に触れることはめったになく、まさか岩手県の人口10万人にも満たない都市でこのような状況が現実になっているとは思いもよらず、大変に驚かれたようです。そして、そのことが受賞につながったに違いありません。建物の芸術性だけではなく、プログラムに即した建物の機能とそれが活かされている状況が評価されたことは、実は建築のデザインにとっても画期的なことであろうと思います。
 劇場コンサルタントは、まさに劇場の機能をデザインにつなげるお手伝いをする専門家であり、その役割が認められたと考えることもできるでしょう。ますます頑張らなくてはいけませんね。

学会賞現地審査風景 現地審査当日のアートファクトリー

(株式会社シアターワークショップ代表 伊東正示)

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No.111

杉並公会堂 ついにリニューアルオープン!

以前Vol.77でお知らせしました、劇場・ホールで初のPFIを導入した杉並公会堂が6月1日、ついにオープンしました。
5月14日に開館記念式典が行われ、6月3日の開館記念コンサートを経て、いよいよ本格始動です。

杉並公会堂は、(株)大林組と(株)京王設備サービスが出資して「PFI杉並公会堂(株)」という会社をつくり、建設(Build)、運営(Operate)を行った後に区へ移管(Transfer)する、「BOT方式」をとっています。
これから平成48年に移管するまでの30年間の間、柔軟かつ幅広いサービスを提供するホールとして、劇場・ホールの新しい形を提示してくれることを期待しています。

■音を愉しむ大ホール

まず、1,190席の大ホールをご紹介します。
私の勝手な表現ではありますが、このホールのポイントは「あたたかい音」です。
舞台上で奏でられた音が「響く」というよりも、すっと耳元に「伝わる」感覚を愉しむことができます。人が演奏する音のあたたかさを体感できるこの感覚、ぜひお試し下さい。
また、クラシックのコンサートを主目的としながら、幕を吊り、天井裏のバトンを下ろすことでプロセニアム形式に転換できるなど、多目的利用も視野に入れた機構・設備を設けたことにより、クラシックのコンサートにおいても電気音響を取り入れたり、照明による演出を加えたりと、さまざまな試みをすることが可能です。

そして、杉並区と提携している日本フィルハーモニー交響楽団がこのホールを拠点として活動します。拠点を得て、ますます磨きがかかった演奏がこの杉並公会堂でたくさん聴けることが大変楽しみです。

■とにかく使える小ホール

「多目的にご利用いただけます」という言葉は、どこのホールでも使われるものですが、この小ホールは本当に幅広く使えます。
客席数194席、または平土間時には全体の広さが212m2という小規模なホールですが、ちょうどいい緊密感が、パフォーミングアーツにも音楽にも適した空間を作りだします。
ほかにも平土間形式を活用しての展示やパーティーなども可能となっており、利用者の方々が、我々の予想を超えた新しい使い方をしてくれるのではないかと思います。


■協働によるオープニング

杉並公会堂のオープニング記念事業の計画・実施にあたっては、杉並区、杉並区文化協会、日本フィルハーモニー交響楽団、PFI杉並公会堂の4者により、「杉並公会堂オープニング記念事業実行委員会」という名前の実行委員会体制が組まれています。
区内の施設の運営主体が何であれ、文化政策は区が行うべきものです。一方で文化政策の実現する場として杉並公会堂は重要な位置を占めます。杉並の文化に関わる4者が協働して事業を行うことは、大変重要なことであると考えます。
今年12月までのオープニング期間に多くの公演が予定されています。ぜひお運びください。
詳しい公演内容はこちら

劇場・ホールの初のPFIである上に、指定管理者制度の施行前に事業化されたために「公の施設に準ずる施設を民間企業が運営する」という特殊な運営形態となった杉並公会堂。これまでもさまざまな課題と向き合ってきましたが、開館後はより一層、予想もしない新しい課題に直面することがあると思います。平成48年に移管するころには、私も現役を引退しているかもしれませんが、杉並公会堂がこれからどうなっていくか、見守っていきたいと思います。


 【杉並公会堂 施設概要】

大ホール   客席数 :コンサート形式時1,190席、幕形式時1,063席
            (前舞台使用時はそれぞれ60席減)
        残響時間:1.9〜1.1秒(満席時)
小ホール   客席数 :可動席194席
その他の施設 グランサロン(245m2
       スタジオA〜E(15m2〜58m2
       カフェ、ショップなど
問い合わせ  03-3220-0401
ホームページ http://www.suginamikoukaidou.com

※弊社では、入札時から開館までの設計・施行監理・運営のコンサルティング業務、およびプレイベント実施業務を行いました。


(株式会社シアターワークショップ 山下 貴子)

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