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Theatre Workshop
Theatre Support
No.120

あるホール事務所での会話
〜インターネット時代のホール運営〜

【人物】

Iさん:お腹がメタボリックで動きはにぶくなったが、口うるさいベテランホールスタッフ
Sくん:ひととおりホールの仕事を覚えてきたが、少しおっちょこちょいの若きスタッフ

【場所】

都内某多目的ホール、管理事務所のなか

【時間】

とある日の午後

Iさん

「Sくん。ちょっとホールの様子を見てきてくれないか?」

Sくん

「(パソコンで何かを打ちながら、監視カメラのモニターしか見ずに)ん〜、特に問題ありませんね」

Iさん

「………S君はほんとうにパソコンが好きだねえ。初めてパソコンのマウスを動かしたのはいつだった?」

Sくん

「小学校のときすかねぇ。学校に一人1台ずつありましたから」

Iさん

「ふーん。僕なんか初めてのマシンは自分で買ったよ。その頃¥200,000もしたんだ。当然月賦だけどね」

Sくん

「すごいっすねぇ。どんなのを買ったんですか?」

Iさん

「マッキントッシュのパフォーマ575という機種だったよ。メモリー8メガバイト、ハードディスクは250メガバイトだったなあ」

Sくん

「げげっ、容量少な。今じゃ何にもできませんね。そんなんじゃすぐに固まっちまいますよ」

Iさん

「………なにしろ12年前、村山内閣の首相官邸にホームページが開設された頃のことだからな」

Sくん

「誰ッスかそれ。何年前の話ですか?」

Iさん

「だから12年前だって言ってるだろ。」

Sくん

「へえ〜、僕が小6の頃ですね。今のパソコンはそのパフォーマなんとかに比べて容量が200〜300倍、処理能力は100倍位になっていますよね。」

Iさん

「頭の中身も100倍くらい成長すればいいんだろうけどな(笑)」

Sくん

「(皮肉に全然気づかない)無理ッスよ。ところで10年一昔って言うけど、やっぱ仕事のやり方も当時とはずいぶん変わったんでしょうね。」

Iさん

「社会全般に言えるんだろうけど、メールでのデータのやりとりが格段に増えたよね。FAXでは読みとれない細かい図面やイベントマニュアルを瞬時に何十ページも送ってもらったり、まとめてQ&Aのやりとりをしたり、とても便利になったよ。」

Sくん

「昔はどうしてたんですか?」

Iさん

「図面1枚でも、電車に乗って届けたりしていたんだよ。」

Sくん

「なんでまた?のんびりしてたんすね」

Iさん

「だから、メールがなかったんだって。」

Sくん

「あっ、そうか。不便だったでしょうね。考えらんないなあ。」

Iさん

「でもなあ、インターネットやメールがどんなに発達しても、我々の仕事って言うのはあまり変わらない部分があると思わないかい?」

Sくん

「そうっすねえ、うちのホールの場合スケジュール予約は電話だけだし、下見、打合せ、開錠・施錠、設営・撤去、空調の設定、ゴミの処理、会計関係の書類作成、届出書類の提出なんて全部手作業ですからね。」

Iさん

「予約の場合なんかは、最近FAXだけで空き状況を問い合わせしてくるお客さんもいらっしゃるけど、どんな催事なのか、どんな方が参加されるのか、直接声を聞いてみないと形が見えないね。」

Sくん

「全部、オンライン化できないっすかねえ。」

Iさん

「そして、最近の特徴としては、開催間際、それも1ヶ月を切ってからの打合せが増えてきたね。インターネットの普及が一因だと思うんだけど、イベントの企画から開催までの期間が短くなったんだ。」

Sくん

「こんなに技術が進歩しているのに、もっとインターネットのうまい使い方ないんすかね。」

Sくん

「君も自分で考えてみたらどうだ。下見の時間もない場合なんか、動画や写真をホームページにアップしてると参考になるだろうね。でもやっぱり実際に現場を見ないと、細かいところがわからないよね。」

Sくん

「今月みたいにこんなにスケジュールが入っていると、下見の時間も取れないっすからね。」

Iさん

「………そういえば、この前頼んでいた古い機材のデータは見つけてくれた?」

Sくん

「いやあ、それが調べたんすけどねぇ、ないんすよ。」

Iさん

「ふーん。どういう風に調べたの?」

Sくん

「ネットで検索しまくりました。もうずーっと。」

Iさん

「それだけ?」

Sくん

「それだけです。これだけ検索してないって事は、もうないですね。製造中止でしょう。きっと。」

Iさん

「メーカーさんには確かめてみた?」

Sくん

「いいえ。メール送ったんすけど、返事がないんすよ。」

Iさん

「………なんだって(-"-;)ムム………。 」

事務所固まる。

Sくん

「(モニターを見て)あっ、バラシが始まりますね。ちょっとホール内に行ってきま〜す。」

Iさん

「………」


さて、Iさんは自分もそうだったのかなあと、自分の若い頃に思いをはせ、Sくんの将来を思い、深く溜息をつくのでありました。

これからのホール運営は、インターネットなどの情報技術やマルチメディアを駆使し、お客様にとって、より使いやすく、よりリーズナブルにハード(スペース)とソフト(使い勝手)を提供していくノウハウが、ますます要求されていくでしょう。
そして、先輩たちから教えられた、「私たちの仕事は『フィニッシュ・ワーク』である」=とりもなおさず人間の手仕事、という感覚を忘れることなく、スピードと質の良質な バランスを保ち、道具としてITを使いこなすようにしていくことを常に念頭におく必要があるのではないでしょうか。決してITに使われてはならないのです。

しかし、なによりも一番大切なのは、そのホールが「何のためにあるのか」ということ です。
合理性を追求するあまりに、面倒なことを簡単に省いてはなりません。想像力を駆使し、目的意識を持ち、安全に、気持ちよくお客様にご利用いただきまたホールのことをより知っていただく為に、ない頭をひねっている毎日です。
世阿弥は「花伝書」に

「是非の初心忘るべからず、時々の初心忘るべからず 
老後の初心忘るべからず、命に終わりあり、能には果てあるべからず。」

と書いています。
ホール運営という仕事でも、「時々の初心を忘」れることなく、「いいホール」にする 日々の謙虚な努力は「果てなし」と続けていきたいところですが………。

(株式会社シアターサポート 井原和洋)

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No.121

「理系」と「ダンス」の素敵な関係
〜東京理科大学『建築特別講義W 建築と芸術』〜

 弊社代表・伊東正示が講師を務める、東京理科大学『建築特別講義W 建築と芸術』の授業が後期から始まりました。先日行われた本年度最初の講義の様子をお伝えします。
 1回目の講義は「劇場とは何か?」という問いかけから始まりました。建築を学ぶ学生にとって、「劇場とは、演劇を上演する空間」という認識が一般的で、学生の反応も概ねそのようなものでした。では、その逆もまた真なのでしょうか?すなわち、演劇を上演する空間は劇場なのでしょうか?例えば、駅前コンコースや街角ではストリートミュージシャンが演奏し、そのまわりは聴衆が取り巻いています。ビルの一室やカフェで演劇公演が行われることもあります。本来は劇場空間ではない場所ほど、より劇的な空間であることもあります。そういった空間を上演の場所に選ぶことは、上演する側にとっては大いにありうる選択でしょう。

写真1

 まずは頭を柔らかくして、すべての空間が劇空間になり得ることを理解し、将来建築家となったときの魅力的な空間創りのヒントにしてほしいというのが伊東の願いです。
 本年度で4年目を迎えるこの授業は講義を聞くだけではなく、毎年ダンスワークショップを行い、作品創りをしています。普段何気なく通り過ぎてしまう学内の空間の中で、劇的空間を見つけ出し、自分たちで振付や音楽を考えて、踊ってみるという試みです。作品創りを通して、劇的な空間が必ずしも劇場だけではないことや、空間とアートの関わり方、演じ手と観客との関係などについて体感してもらうことがねらいです。今年はワークショップのファシリテーターに、弊社のスタッフでもあった振付家・早川朋子さんを迎えています。

写真2

 シラバスには講義内容が書かれていますが、まさか建築学科の授業でダンスを踊るとは思ってもみなかった受講生たちは、半信半疑で昨年度のダンスワークショップの作品ビデオを観ました。4グループの作品をそれぞれ観ましたが、どれも個性豊かな作品ばかりでした。階段の吹抜けの4階から1階で行うダンスを見下ろして観てもらう作品や、食堂の中でお客さんとパフォーマーを混在させ、お客さんも作品の一部にしてしまう作品。それから、壁に開けられたちょうどプロセニアムアーチのような開口部を鏡に見立て、鏡の「こっち側」と「あっち側」の関係がねじれていく不思議な展開の作品など、ワークショップ未経験者ばかりとは思えない、ひねりの効いた作品もありました。昨年度、ワークショップのアシスタントを勤めてくれた某大学の文学部の学生さんは、理系の皆さんの発想力にとても驚いたそうです。かく言う筆者自身も文系出身で、昨年度の映像を観ながら、作品の完成度と着眼点の面白さ、そして特に空間を立体的に捉えた展開に、文系的な発想に欠けているものをつまびらかにされるような思いでした。今年のファシリテーターの早川さんも大学で建築を学んだ理系出身です。彼女自身の振付作品にも同じように心を動かされた経験がありますが、その芽を持っている学生さんが沢山いることにも驚かされました。
 1回目の授業で、本当に踊らされることがわかり、不安そうな雰囲気のまま授業が終了しましたが、皆さんに書いてもらったアンケートを見てみると、実は音楽や演劇に興味を持っている学生さんが大多数でした。さてさて、今年は、何を見つけて、どんな作品を見せてくれるのでしょうか。期待をせずにはいられません。



(株式会社シアターワークショップ 小池浩子)

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